MVPとシアトルとWindows Phone (1)

WP_20151101_15_44_16_Rich今年も年末に突入しました。この記事は「Windows Phone / Windows 10 Mobile Advent Calendar 2015」の4日目の記事の前編です。(前日に公開しています。本編は予定通り明日公開です)

さて、今年私は「Microsoft MVP for .NET(今はカテゴリーが再編されたので、Visual Studio and Development Technology)」を受賞しました。MVPを受賞すると特典の一つとして、一年に一度行われる「MVP Global Summit」への参加資格が得られます。生まれてこの方、一度も日本を出たことがなかったので、この節目に行ってみようかと思いました。この記事ではその話に絡めてWindows Phoneの話をしようかと思いましたが、その前に「Microsoft MVP Award」(長いのでMSMVPと略します)についての紹介もしようかと思います。


Microsoft MVP Awardとは

MSMVPの紹介ページには、以下のような事が書いてあります。

「Microsoft Most Valuable Professional (MVP) は、自身のマイクロソフト技術に関する知識や経験を最大限に活かしながら、他のユーザーを積極的にサポートしている、非常に優れたコミュニティのリーダーです。彼らは、技術専門知識に加えて自主性と情熱を兼ね備え、マイクロソフト製品の実用的な活用方法をコミュニティやマイクロソフトと共有しています。」

コミュニティのリーダーかどうかは分かりませんが (;´Д`) コミュニティ活動を積極的に行っていることに対して、Microsoftが表彰する制度の事です。ただ、これは「受賞を目指した」り「受賞する」までは、実にどんな制度なのか分かりにくい面があると思います(実際、某フォーラムでは、MVPだからオフィシャル的な云々のような辛みのあるポストが度々発生)そこの所を端的に分かるようにしてみます。

MSMVPの表彰は、一年に一度、過去一年間に渡ってのコミュニティ活動が評価されて表彰されます

例えば、私の場合は2015.04受賞ですが、応募期間は3か月前が締め切りなので、2014年年始から2014年の年末までのコミュニティ活動が評価されて受賞したことになります。年末・3月末・6月末・9月末、が応募締め切りとなるので、狙っている方はその時期の早めにサイトをチェックすると良いでしょう。

MSMVPの応募は、自薦と他薦です

ただ、自薦が多いんじゃないかな。私も自薦応募です。自薦・他薦の比率は分かりませんが、あまり重要ではないでしょう。応募の際には、過去1年間の活動状況をシートに記述する必要があります。例えば勉強会で登壇したり、ブログ記事を書いているなどの活動記録を、あらかじめ収集しておくことをお勧めします。最初は面倒ですが、受賞後はオンラインのフォームに入れておくだけで、MVPプロフィールと連動して評価されるらしいので、楽になると思います。

「コミュニティ活動」とは何?

私が無償で勉強会やブログ記事を書いたりしていますが、これもコミュニティ活動です。一方、有償セミナーや書籍を沢山書いて出版している著者の方も受賞していたりするので、結構幅広くとらえられているようです。どのような基準で評価されるのかは、非公開であるため分かりません。受賞した場合や落選した場合でも、その理由は明らかにされません(試験と一緒ですね)。

受賞カテゴリーが決まる必要があります

少し前にカテゴリーが大幅に整理されました。MSMVPへの応募を行う場合は、これらのカテゴリーの何れか一つだけを指定する必要があります。ご自身の最も専門である分野を選ぶことになりますが、審査の過程でカテゴリーが異なると判断された場合は、別のカテゴリーで受賞する可能性があります。

MSMVPに与えられる特典とは

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多分、非受賞者からみて、ここが最もモヤモヤするところなのではないかと思います。

  • MSMVP Award Kitの受領:写真のような、立派なトロフィーや証書がもらえます。
  • MSDN Enterprise subscription / Office 365 1年分
    恐らく開発者にとっては、一番欲しいと思っているものかも知れません。MSMVPは1年間の受賞なので、次年度選考に外れてしまうと、Subscriptionは継続できません。
  • 米国本社のカテゴリー別開発チームとの、NDAベースのディスカッションの機会が得られる
    メールでスケジュールとか飛んできます。Skypeで参加するので、基本的に英語が喋れないと参加は難しいです。おまけに時差の影響があるので、ほとんどが夜中となります。日本人には敷居が高いかも…
  • MVP Global Summitへの参加権
    毎年11月ぐらいに催されているようです。期間中、米国本社(ワシントン・シアトル付近)のホテルに無料で宿泊できますが、飛行機代やそれ以外のコストは自腹でねん出する必要があります。また、ここで見聞きする技術情報はNDAベースなので、最新情報を聞いて帰ってきても、喋ることは出来ません。

NDAとは、秘密非開示契約というもので、見聞きした事は第三者に漏らしてはならないというものです。だから、どれだけNDA情報を知ったところで、twitterやfacebookでつぶやくどころかブログに書いたりオフで誰かに喋ったりなどは全く出来ません。これは、同じMSMVP受賞者同士にも当てはまります。どうですか?「それほど」強力な特典でもない気がして来ましたか? 物的な特典を期待していると、それほどでもないと思います。

誤解のもとになっている事かも

MSMVPに対する誤解の一つが、MVPというブランド的な力が良くも悪くも強いため、MVP受賞者というだけでMicrosoftの関係者と同じか、あるいはそこにきわめて近しい人のように見えてしまうことにあるのかなと思います。上に挙げたようにMSMVPの特典は良いものですが、その一方で、MVP受賞者だからとある第三者に何か便宜を図る事が出来たりとか、チートな権力を持っていたりとかは全くありません。また、受賞者は普段からMicrosoftの「製品」や「技術」をコミュニティに広げようとしているだけなので、賄賂めいた何かがあるわけでもありません。実際、広く活動している方が翌年度には落選したりすることもあります。しかも、その理由は明らかにならないのです。

だから、あまりフォーラムや掲示板で無理ゲーなことを言われても困惑する事になるわけです。

また、専門分野があるので、それ以外の事を聞かれてもまた困ってしまいます。いまやMicrosoftの技術は一人ですべてを把握するのは不可能なぐらい幅が広いです。.NET受賞者である私に「Excelのマクロのこの関数が…」と聞かれてもさっぱりわからないのです。MSMVP受賞者、というだけで超サイヤ人的に見られるのも結構つらみがあります。

追記: de:code 2016で、MVP Ask Meというキャンペーンが行われました。その時に配布されたパンフレットを公開しています。

「Windows Phone / Windows 10 Mobile Advent Calendar 2015」本編の(2)へつづく