Regional Scrum Gathering Tokyo 2016に参加してきました

WP_20160118_19_04_21_Pro_LI「Regional Scrum Gathering Tokyo 2016」は、ソフトウェア開発手法として知られる「スクラム(Scrum)」に興味のある方、この手法を適用している組織の方、トレーナーの方などが集まる大きなイベントです(一般の方も参加できます)。

私は認定スクラムマスターを2年ほど前に取っていますが、1年前のRSGTには参加できず、今回の参加を非常に楽しみにしていました。セッションの概要や内容はリンク先を参照してもらうとして、参加者の視点で、内容をちょっと紹介したいと思います。

セッションスケジューラーはこちら。

どのセッションも興味深く面白い内容だったのですが、去年末にCSPOを取ったことで、全体を通してちょっと見方が変わったかなという、自分自身への印象がありました。とても全部紹介できないので、勝手視点で勘弁してください。本当にどのセッションも素晴らしかったです。


「生き延びよう!強い組織になろう! – 迷わず行けよ 行けばわかるさ」(Takahiro Kaiharaさん)

スクラムマスターの役割を一人で背負いすぎて折れてしまったという点が、本当に共感できました。これはつらい。つらい、と言うだけで、物事はどんどん悪い方向に転がっていきます。アジャイルソフトウェア開発やスクラムの導入を検討している方は、一人で抱え込まずに協力してくれる人を探して「みんなでやる」と言うのが重要だと思います。

WP_20160118_14_12_25_Pro_LIスクラムによって(いや、本当はスクラムによらず)目指すことは、スクラムなどのソフトウェア開発手法を適用することではなく(それは手段)、企業がどんな価値を提供できるのかだと思っています。

それはすごく大きな問題なのですが、それを「ひとり」で実現するのは、本当につらい事です。このRGSTや他のカンファレンス・勉強会、場合によっては外部コーチの助けを借りよう。ぼっちいかん (´Д`)

まだまだ課題はあるけれども、「学習する組織へ」「組織の文化へ」と、粛々と物事を進めていくのが大切だという話で結ばれていました。

カンファレンス終わった後で少しお話しさせて頂いたのですが、物腰柔らかい方で好印象でしたが、本人は超熱い方だと自負していました。分かる気がしますw


スクラムパタン入門 / Intro to Scrum Patterns(Kiro Haradaさん)

スクラムの共有知として、パタン(パターン / Pattern Language of Programs / PLoP)を適用しよう、それを今整理中ですという話です。パタンとは何か?という話から、何故スクラムの取り組みをパタン化する必要があったのかという経緯を分かりやすく解説していました。スクラムパタンはWikiで編集中で、パタンについてのアイデアがある方は、是非参加して欲しいとの事。最低レギュレーションは「そのパタンを3回適用して成功した」だそうです。

スクラム提唱者の一人「Jeff Sutherland」は、スクラムがこの世界に広まってからもう随分と時間が経っていて、新しい考えやアイデアをもっと取り入れて整理したいと考えています。スクラム自身のカイゼンですね。良い事だと思います。

一方、私はパタン(特にデザインパターン)について懐疑的だったのですが、その理由が「コンテキスト(文脈)」をはっきりさせた状況でないとパタンは有効に機能しない、という、ある意味当たり前の事に気が付いていなかった(無意識では知っていたので、何となく避けていて、いつもパタンに対してモヤモヤしていた)。それをサラッと明らかにして貰えただけで感動でした。

WP_20160118_16_24_10_Pro_LIパタンの使い方:

  • ある状況における問題を解決できる。(状況=文脈)
  • 結果として現れる状況が、新たな問題を生むかもしれない。
  • 新たに生まれた問題には、別のパタンを使う。

この前後関係(何かしかの想定される問題・パタン適用によって何が解決され、副作用としてどんな問題が想定されそうか)というのは、スクラムガイドにも殆ど載っていないため、主に書籍やセミナー・勉強会で経験知として積むしかないかなと思ってた(+パタン懐疑)のですが、パタン化によってデベロッパの事が直接分からなくても意思疎通ができるようになるのであれば、これは良い道具になるなと思いました。もっとも、このような言語化の難しい課題なので、作業は大変困難であるようです。ダメパタン案や置き換え案は、(書いてあるメモを)たき火にくべてサヨナラしたというエピソードが良かった。


Customer Expectations Management of Scrum スクラムにおける事前期待のマネジメント(Mitsunori Sekiさん)

Sekiさんは、同じMSMVP(カテゴリ違い)で、このセッションはプロダクトオーナーよりの話です。そもそも私は自分の会社はあるもののデベロッパー寄りなので、CSPO(認定スクラムプロダクトオーナー)を受けたら、今まで考えてたつもりになってたPOや企業の事業とはどんなものかの片鱗みたいなのを味わったという経緯があります。そんなわけで、このセッションも楽しみにしていたのです。

スライドはこちら。内容は、「サービス」やそれに対する「事前期待」とは何か?そしてそれをスクラムに当てはめた場合にどうなるのか?という話です。特にいきなり「サービスサイエンス」なる言葉も初耳で、そんな分野があるのかというのが第一印象でした。事前期待の対象・持ち方・持ち主や、顧客が求める対象を定義することで、その相関の中で何に対して注力すべきで、あるいはそうではないのかが明らかになります。

この方面、しょっぱなから苦手全開である事を自覚せずにいられなかった。これは非常にまずい事が可視化された! (;´Д`)

重要なことは、サービスの成果とサービスのプロセスの組み合わせで顧客の満足性を考えた場合に、成果側は「根付きにくく」プロセス側が重要度が高いという、サービスを施された側からは当たり前なのに実は見落とされがちだと言う事(あるいは、無意識に避けているか?)でした。「価格.com」に掲載して競争する場合の例が非常に分かりやすかった。

servicequalityで、ここまでは本当の意味での事業戦略みたいな話なんですが、この流れは、スクラムチームの運営にも当てはめることが出来ますよという感じで展開。

この図に身に覚えのある人は多いと思いますがw スクラムチームのアウトプットをサービスとして考えた場合、ステークホルダーが期待している「事前期待」とマッチしていない事はありませんか?

あるいは、このような分析手法を持ち込むことで、一般的に言われている「プロジェクトマネージメント」が、当たり前品質の一部しか担っておらず、そこで努力を続けてもあまり実りはなく、チーム内で差別化品質と言う事に注目できるようになりますよ、という内容でした。

… 素晴らしい、そして課題が増えました。まだまだ遠いなー


それにしても、裏番も超強力で、全部聞けなかったのが非常に悔しい。特に聞き逃した感あったのが「金融系IT企業におけるスクラムへの挑戦(Yasumi Nakanoさん / Hiroko Shimaseさん)」。一体、金融系というどうしようもない企業文化で、どうやってそこに挑戦していったのか、ビデオでいいから見たい… 後から概要聞いてみたら、やっぱりすごかったらしいです。

Publickeyで記事になっていました。注目度高い!

運営の関係者の皆さん、スピーカー・参加者の皆さんありがとうございました。来年も1月ごろに開催される予定です。募集は10月ぐらいかな?まだ参加されていない方、是非参加してみて下さい。またお会いしましょう。