コーディングガイドラインの車輪を再発明

正直、「好きだね、決めるのが」というところなのだが、コーディングガイドラインについての定義が多いなあと思う。
先日、CodeProjectで、またもやその一つが投稿され、コメントが炎上(?)していた。

Some practices to write better C#/.NET code

この中に何点か、自分的に納得いかないプラクティスがある。

  • Capitalization Conventions – プロパティはともかく、フィールドはプライベートもPascalなのか?自分的にはこうだ:moneyRemains_ – これは、ANSI C/C++において、安全とみなせるシンボル表記だ。但し、アンダースコアが後ろに続く表記はあまり見たことが無いかもしれない。自分のように、C++、C#のどちらも頻繁に書く場合、どちらでも通用する書き方にしたい。但し、それはシンボルが公開インターフェイスでなければ、の話だ。この記事ではないが、進行中のプロジェクトでは、readonlyフィールドが全て大文字という縛りがあって、かなり違和感がある。ここだけ単語の区切りが分かりにくいので、アンダースコアで区切ることになる(DIEING_DICTIONARYのような)。すると、確かに目立つは目立つが、まるでconstかと主張しているようだ(constではなくreadonlyなのだが)。どうも、readonlyインスタンスとconstの決定的な違いを分からず決めたように感じる。
  • DO declare all member variables at the top of a class, with static variables at the very top. – たのむからプロパティをコンストラクタより上に持ってこないでくれ。フィールドとプロパティを同一のように扱うと罠にはまる事があるから、見てすぐにわかるようにしておきたい。
  • DO NOT suffix enum names with Enum – これは同意だが、できれば列挙型名は複数形にして欲しいな。列挙型を定義してTlbExpでタイプライブラリを出力、C++側でインポートした時とか、不自由しなくなる。まれなケースだけど、まれなケースの時だけルールを変えるぐらいなら、複数形にする事に負担があるわけじゃないからやればいい。
  • Avoid Obsolete Comments – これはかなり炎上していたな。前提としては、コメントを「書かなくても済むようにする(シンプルで意味が明瞭な実装を心がける)」ということに賛成だが、不可避な場合がある。結局、突き詰めていくと、コーディングの問題じゃなくて、大枠の設計(ユーセージモデルとか)が問題で複雑化してしまっていたりするので、どうしてもコードが複雑にならざるを得ない事がある。そのような場合に、将来自分でこのコードを見たときに、昔自分が何を考えてこのように実装したかを書いておくためにコメントを使っている。これを書いておかないと(自分でも)理解不能ではないだろうかと思うような場所で、かつ改善できないような痛い場所だ。しかし、出来れば設計からやり直させたいね。
  • Avoid Multiple Exit Points – これは絶対拒否だ。一体これをやりたがるのは何故だ?CPUにはプログラムカウンタ(インストラクションポインタ)とスタックというものがあり、これらの情報で一種の仮想的な「ハードウェアステートマシン」を実現しているのだ。条件分岐のブロック内に居るという「事実」が、この情報だけで表現されているのに、何故手でステートを管理したがるのか。ステート変数を導入すれば、それがいつどこでどのように変更され、どのような場所や場合においても正しくふるまっているかどうかを管理しなければならなくなる。C++でRAIIが当たり前に使われているのは、こうしたステート変数を避けるためだ。これ以上、処理の必要がない分岐ルートでは、速やかにメソッドから退出(return)する。そうすることで、余計な分岐ルートを削減できる。分岐ルートを削減できれば、パターン網羅のためのテストコードも少なくて済む。メソッドが下に落ちていくほどルートはふるいにかけられ、終盤ではそこに居るための「暗黙条件」は絞られるはずだ。結果として、コードはよりシンプルになる。

思うに、こういう事は意外かもしれないが、「ルールを決めて徹底させる」事が諸悪の元凶に思う。たとえば、重厚な開発プロセスを導入する事は、そこから緩慢な死へと向かい、より良い未来に前進することはない。プロセスを定義するという事は、「考えなくても出来る」ことを目指すため、例外なく「思考停止」し、本当は何が問題でどうしようとしていたのかが置き去りにされてしまう。常に最善とは何かを考えるためには、プロセスは邪魔なのだ。

もっとも、多人数で作業を進めるために、何らかの決まり事は必要となる。重要なのは、それが常に陳腐化する可能性があり、いつでもすぐに見直し、正しい方向に修正しなければならないことをメンバー全員が周知していなければならない事だ。加えて、業務を遂行するために、いつでもルールが変更可能でなければならない。何らかのプロセスを導入していると、「こうするのがルールだから仕方ないよね」というところから始まって、なし崩し的に開発効率が落ちていく。終いには、何が悪くてこうなってしまったのかすら、誰もわからないという寒い状況に陥る。

上記に示したルールは、私が業務を進めるにあたって、C++/C#の両刀使いである前提でのルールも含まれている。CodeProjectの元記事や私のルールを鵜呑みにせず、積極的にルールをぶち壊し、再発明してほしいものだ。

投稿者:

kekyo

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2 thoughts on “コーディングガイドラインの車輪を再発明”

  1. 確かに、コーディング規約とか何度も見たが、大概、自作の規約は酷い。逆に有名な規約は厳しい。
    運用に至っては、コードレビューの主要事項に入っている事も多いですね。ww (そこか?w)
    個人的には、まあ、それっぽかったらいいと思いますが。

    1. 現実に即しているかですよね。コーディング規約なんて「手段」なのに、「目的」化している事が問題。

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